岩国地域における孤立死問題

 

 

 孤立死が社会的な問題となってすでに久しい。孤立死は人間の尊厳が冒された死として理解されている。報道などでは孤立死と孤独死が混同されていることもあるが、一般的に孤立死とは社会的に孤立した状態で亡くなった場合、孤独死とは看取る人がおらず亡くなった場合を呼ぶようだ。 

 

 先日岩国駅前地区の民生委員とお話しする機会があった。その方も孤立死の問題は気になるようであった。つい最近も受け持ちの地区で、アパートで一人暮らしをしていた方の明らかな孤立死を経験されたとのこと。窓にハエがたかるような状態まで周りも気が付かなかったようだ。死後相当の日数が経過していたのではないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 山口県警察捜査一課の資料(表参照)によると、平成24年から平成28年までの岩国警察署管内での、65歳以上独居者の検視件数は1年間平均して54.2件、山口県全体では年平均514.8件となっている。私自身正直予想を上回る数字だった。この数字をすべて孤立死ととらえることはできないが、一つの指標としての意義はあると考える。

 

 「2011年3月(株)ニッセイ基礎研究所セルフネグレクトと孤立死に関する実態把握と地域支援のありかたに関する調査研究報告書」は各県の孤立死推計を行っている。2009年時点の「東京23区における孤独死の発生数」(東京都監査医務院)と2010年版「人口動態統計」(厚生労働省)から計算したものだが、山口県では「死後の経過期間2日以上」は389.8人、「死後の経過期間4日以上」は224.0人、「死後の経過期間8日以上」は122.0人となっている。岩国地域(岩国市・和木町)の人口が山口県全体の約1割であることを考えると、「死後の経過期間2日以上」岩国地域の1年間の件数はおよそ40と考えられる。孤独死は決して遠い存在のものではなく、私たちの身近に起きているあり触れた現象ともいえるのだろう。 

 「高齢者等が一人でも安心して暮らせるコミュニティーづくり推進会議報告書」(平成20年3月厚生労働省)によれば、核家族化の進展などによる家族構成の変化、借家住まいの増加などの居住形態の変化、格差拡大などの経済状況の変化等社会経済的な変化は、住民の意識にも変化をもたらしていることを指摘している。そしてそれは「支援を望まない単身者」の増加を導いていると結論づけている。

 

 今後岩国市においては高齢化が進み、単身高齢者世帯や高齢者夫婦世帯がいっそう増えることが予想される。また人口構成からみても見守りの担い手が減少し地域力が衰退することが考えられる。社会からの孤立のリスクが高まると受け止めるべきではないか。

 行政の対応はどうだろうか。山口県も岩国市も「孤立死」の定義が決まっていない。そのためだろう孤立死の実態調査なども行われていないようだ。一方山口県では「地域見守り活動に関する協定」締結、岩国市では「いきいき見守り事業」などが取り組まれている。しかし全体的な現状把握のない施策では十分に機能しているとは考えにくいのではないか。

 必要なことは住民と行政の心を通わせた共働と考える。孤立死の対策は虐待・認知症・災害予防への対応と一体になった施策であるべきだ。住民からの実態告発を参考に行政の真摯な対応が求められる。ただし、行政にモデルを描いてもらうようなことは極力避けるべきだ。あくまで住民と行政が一緒に汗を流すような姿勢、これが超高齢・人口減少社会には必要と考える。

 

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